Masuk少し時間は遡り、ライクとニケルの元から離れ走り続けるフィナはギンジの所へ向かっていた。「ハァ、ハァ!ギンジさん…それに他の皆んなも、無事なのかしら?…」フィナは走りながらギンジの事以外にも、カイルとエミル、ミーナ、ライクとニケルの事を考えていた。「それに、あいつ。作戦は上手くいってるんでしょうね?」あいつとはネルの事である。ネルの作戦はまだ不明であるが、どうやら他の皆んなもその作戦は周知済みらしい。そう言いながら、フィナはギンジの魔力を感知しながらギンジの元への走って行くとようやくギンジの居る場所に辿り着いた。しかし、フィナはギンジを見るなり。「ギンジさん!」焦りながら目の前のギンジを呼ぶフィナ。目の前には刀を持ちながら血塗れで相手の方を見続けるギンジが立っていた。その相手とは。「…特殊特攻部隊の部隊長。アルバス。…噂には聞いていたよ。他国を殆ど1人で制圧してしまう、若くして部隊長になった男が居ると。」アルバス。ギンジと戦っていた相手。その後方にはアルバスの元に派遣された特攻部隊の軍人10人が倒れていた。どうやらギンジは先に軍人10人、全員を倒せたらしい。アルバスを相手にしながら10人を倒す技量は流石、八握剣(やつかのつるぎ)のリーダーと言える。しかし、そんなギンジでもアルバス1人に対して手も足も出ないのか未だアルバスの身体は無傷。アルバスは涼しい顔をしながら目の前のギンジを見てるだけ。「もう良いかな?勝負は付きました。僕、他の所にも行かないといけないので。」「…まだだ!まだ、俺は戦える!」ギンジは再び刀を構えるが、その立ち姿からもう限界なのが見て分かる。そんなギンジの姿を見たフィナはギンジの前に出て来た。「ギンジさん!ここは私に任せて下さい!」「フィナ…。」「あなたはこの国の要です!だから、今は私があなたの代わりとして戦います!」「今、ライクとニケルがあの人と同じ部隊の副部隊長と戦っています!私だって、私に出来る事をしなければ…。」今のフィナには傷付いたギンジを守る事。そして、ライクやニケルが頑張ってるから自分も戦うという考えであった。自分も何か役に立たなければ。その気持ちばかりが先行していた。一方、目の前に居るアルバスはそのやり取りに興味を示す訳でもなく、表情を変えず見つめながら言った。「もう良いかな
ラーケウスの悲劇を聞いたライクとニケルとフィナ。ライクとニケルに関しては、昨日ミーナからグレンの事を聞いていた為、ラーケウスの話が本当の事なのだと理解していた。自分達も同じ様に理不尽な目に遭ってきた。共感は出来る。しかし。「…お前の言ってる事は本当の事なんだろう。同情はする。」「けどな。お前にどんな過去があろうと、今お前らがこの国に攻めてきている事は別問題。理由にはならねえんだよ!」ライクは両腕に雷を発生させながらそう言った。ニケルも同様に。「自分の辛い過去を盾にしても、間違いを正当化する事は出来ない。そんな過去の話で、僕達が惑わされると思ったら大間違いだよ!」ニケルもラーケウスの悲劇の話に対してライク同様反論した。「ライク…ニケル。」2人はフィナの制止によって思考が冷静になっていた。そして2人は気付いた事がある。自分達だけが不幸なのでは無く、皆んなそれぞれ心に闇を抱えている。だからと言って自暴自棄になり、簡単に堕ちてはならない。そういう時こそ自分1人で背負い込まず互いに助け合う事が大事なのだと、みんなと過ごして学んだライクとニケルであった。それを聞いたラーケウスは一気に表情が変わる。先程までのオドオドした感じでは無い。3人を蔑む様な冷たい眼差しで、頭を大きく右に傾けた。「そっか。…僕の言ってる事を理解してくれないんだね?」「分かった。じゃあもう良いよ。君達もあの男(バンジョウ)の様に毒で侵してあげるよ。」そう言ってラーケウスは両手の掌から紫色のガスを噴射する。ガスは霧散し、大きく広がっていくもそれに対してニケルは風の力で霧散したガスを吹き飛ばす。紫色のガスが吹き飛んだ事により、再び視界が晴れる。その隙にライクは超スピードでラーケウスの腹部に対し、雷で纏った拳で殴り飛ばした。「うおおお!!!」拳を振り抜くと、ラーケウスは50m程吹っ飛ばされた。するとニケルがフィナに向かって言った。「フィナさん!ここは僕とライクに任せて!フィナさんはギンジさんの所へ!」「ニケル!」「もしかすると、奴らは八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーから徹底的に潰しに掛かってるんだと思う。もしかすると、ギンジさんも1人で戦ってるかもしれない。」「僕はニケルとあいつを倒すから、フィナさんはギンジさんを加勢しに行って欲しい!」ニケルの読み
一方、カイルとエミルは他の八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーと合流する為に移動を続けていた。そしてようやく辿り着いた時、目の前の光景を見て驚愕した。そこには。「え、何で?…何で、ゴウシさん達が…。クロツチさんまで!」「スイゲツさん!ルキアさん!ヒナタさん!」何と、先程まで特攻部隊を圧倒していた筈のしかも八握剣である5人が血を吐いて倒れていたのであった。何があったのか?それは、数分前に遡る。特攻部隊を倒し、次の地点へと移動を開始していた5人。5人はある1人の少女を見つけた。濃いピンクの髪を2つに括り、右目には白い眼帯を付けている少女。少し気が病んでそうな見た目をしていた。一見すると戦いには無縁そうな感じであったが、北の大国の象徴である純白の軍服を身に纏っていたが、女性の為か下は白いスカートになっていた。間違いなく、ウンディーネ軍の先行部隊。「ゴウシさん。ここは俺がやるよ。」そう言ってスイゲツは自身の刀を鞘から抜き、目の前の少女の方へと歩いていく。少女は何故か地面にへたり込んでおり、ビクビクと震えていた。「ヒィィ!ごめんなさい!ごめんなさい!」少女は怯えながらひたすらに謝り続ける。「え?」「私、もう戦えません。戦いが怖くて逃げてきたのです。…ですから私を、襲わないで下さい!」左目から涙を流しながら懇願する少女。足元には自分の武器らしい、白くて細長いレイピアが置かれている。「そう言われても、あんた敵だからな。」「そうですよね。私の言う事なんて、誰も信じないですよね?」すると少女は足元に置いていたレイピアを取り出した。それに気付いたスイゲツは刀を構えるも、少女の行動を見て立ち止まる。少女は手に持ったレイピアの先端を自分の首元に向けていた。「分かりました。私の事が信用出来ないと言うのであれば今ここで、死んで見せます!」「お、おい!やめろ!何も自分からそんな事する必要なんて…」スイゲツは自殺しようとする少女を止めようとするも、少女は笑顔で。「ううん、良いんです。それで私の疑いが晴れるのなら。」「さようなら。」そして少女は自分の喉元に向けたレイピアをそのまま強く刺した。ザシュッ!!「…ゴフッ!」血を吐いてその場に倒れたのは、スイゲツであった。「通りすがりの、剣士さん。」少女は自分の喉元を刺したまま、倒れた
瞬く間に特攻部隊は部隊長であるボルケニアと副部隊長であるガロウが倒された。特攻部隊の副部隊長は残り2人。その内の1人が報告を聞いて驚いていた。「何だと!ボルケニア部隊長とガロウがやられたと!?」「はい!やったのは八握剣(やつかのつるぎ)の奴らです!その他にも多数の死者が!」「奴らめ!バラけて動くのでは無く、纏って各個撃破を狙ってるのか?…だが、戦場で戦力を分散させないのは逆に言えば守りが手薄になってるという事。」「皆の者!このままノーム王が居る城に向かう!八握剣以外の侍は大した事は無いから、狙うなら今だ!」「「ハッ!!」」2人目の副部隊長であるエンジュは部下の軍人に向けて命令を下すと、それにより部下達の士気が上がり走り出す。手薄になった防御網を突破するのは今の内だと言わんばかりに。しかし、その考えは大誤算であった。北の大国は東の大国の戦力を八握剣(やつかのつるぎ)と裏切ったネルだけだと思っており、それ以外の戦力については考えていなかった。当然、カイル達が居る事なんて想像すらしていなかった。突撃していた部下達。すると突然、バタバタと部下達が倒れていった。「な、何事だ!?」副部隊長のエンジュは目の前で突如倒れ出した部下達を見て言った。「エンジュ副部隊長!前方に2人の影が見えます!」「何!?」目で確認すると部下が言った様に、そこには2人の人影が見えた。1人は身長が低いが2本の黒い刀を持った黒髪の男。もう1人は黒いタンクトップとショートパンツを履いた水色髪の女性であった。そう、カイルとエミル。2人は一緒に行動しており、先ほど部下達が急に倒れたのはカイルの影の円展開で、影に入った部下達を斬ったからだ。エンジュは目の前のカイルの服装を見て気付いた。「そのマントと黒い服。間違いない、お前はイフリークの騎士団団長!カイル・エリオン!」「何故イフリークの騎士団が東の大国側に!?」全く想定していない状況に理解が追いつかないエンジュ。それに対してカイルは答えた。「この戦争でこの国の被害を減らす為だよ。」「悪いけど、君達をノーム王の所へは行かせない!」そう言ってカイルは2本の黒い刀である暗影蛇と黒纏蛇を構えた。「お前ら!撃て!撃てぇ!!」エンジュは部下に発砲命令を下し、即座に部下達は銃でカイルとエミル達を撃ち始める。しかし、
魔導砲・アステリアにより、火の海と化したノームの街。大都会の象徴であった何十階もある建物はその威力によって高い部分は消失した。燃えた瓦礫が辺りに散らばった地面は、平和な国から地獄の戦場へと一気に変えられる。上空の魔導戦艦はその変わり果てたノームを見下す様に宙に浮いていた。そして魔導戦艦から放たれた無数の戦闘機は地上に向かって急下降し、機関銃の様な物を地上に撃ち放つ。ズドドドドドドド!!!!機関銃の様な物から放たれるのは1発1発が魔力の籠ったエネルギー弾であり、地上に撃ち込まれた部分からは爆発が連鎖的に起きる。徹底的にこのノームを潰そうとしているのが分かる。小国など武力の低い国はこの攻撃で大半が機能不全に陥るだろう。しかし、この東の大国ノームは違う。魔力で動かす機械や医療など、他国よりも繊細な技術面が発展している先進国である。当然、軍事に関する機械も最先端の技術が搭載されているのだ。東の大国には風狼機巧工房(ふうろうきこうこうぼう)と呼ばれる、飛行艇や四輪駆動車を製造する機巧工房が存在する。(第31話参照)性能重視で機械が造られている東の大国が誇る技術の叡智(えいち)がこの場所に保管されている。その機巧工房から東の大国が造り出した戦闘機が上空へ飛び立ち、北の大国の戦闘機へ向かって行く。北の大国の戦闘機が100機を超える戦闘機に対し、東の大国側の戦闘機は40機程度。圧倒的に戦力の差は北の大国が上である。しかし、それはあくまで戦力差の話。最新の技術を搭載された戦闘機はその戦力差すらものともしなかった。東の大国の戦闘機はステルス機能が搭載されており、その機能によって戦闘機は透明化する事が可能。それにより、視覚的に見えなくなったところで東の大国側の戦闘機が反撃を開始する。エネルギー弾も北の大国の戦闘機とは違い自動(オート)で狙いを定める為、どれだけ戦闘機を速く操縦してても狙いがブレる事は無い。透明化した状態のまま自動で相手の狙いを確実に定め、一方的に攻撃を仕掛ける事で数の戦力差を埋める。これが、技術力の高い東の大国の戦闘機の力。数の量産は難しくも、その機能性は北の大国の戦闘機を遥かに上回っていた。視覚的に確認出来ず、例え戦闘機に乗った操縦士の魔力を感知したところで、気付いた時には既に撃ち落とされてしまうのだ。そして全ての北
一方、魔導戦艦を撃破した東の大国側は更なる北の大国の攻撃に備えて避難誘導が行われていた。 次も都市部を襲撃してくるであろう北の大国の動向を予想し、国民達は総面積20㎢あるノーム王の城の城壁内へと誘導される。 勿論全員を城壁内に誘導は出来ない。 そこでグロードやネルが持つ空間移動の力で、子供を優先して他国へ転移させる事にした。 行き先は西の大国イフリークと南の大国シルフ。 両国は復興作業が順調に進んでおり、既に避難の受け入れが整っている状態であった。 カイルはイフリークの騎士団に。そしてシルフの王の証を継承したフィナは大国に連絡した事によりスムーズに避難誘導が行えている。 そしてカイルの両親と妹のレイアはグロードに空間転移でイフリークに転移させられる予定であった。 「父上、母上。レイア。戦争が終わったら必ず迎えに行くから。」 「うむ。カイル、無事を祈る…。」 「カイル…絶対に生きて帰って来てね。」 小さく返事するカイルの父親であるが、やはり心配なのか表情は暗かった。 母親のカルラはやはり心配であり、涙を流しながら言った。 そしてレイアはカイルに抱きついた。 「…お兄ちゃん」 強く抱きしめるレイアはカイルの胸に顔を埋める。 「…大丈夫。大丈夫だから。」 そんなレイアに優しく頭を撫でながらそう言うと、レイアはゆっくりとカイルから離れた。 そして視線を後ろに居るミーナ、エミル、ライク、ニケルに向ける。 「ミーナちゃん。エミルお姉ちゃん。」 まずはミーナとエミルに向かって言う。 「レイアちゃん。…また戻ったら一緒にお話ししよ!」 両手を膝に付き、少ししゃがんだ姿勢のまま笑顔で言うミーナ。 「そうね。レイアちゃんも、気をつけるのよ。」 レイアの頭をポンポンと撫でてあげるエミル。 「うん!またいっぱいお話ししよ!」 そして今度はライクに向けて言った。 「ライクお兄ちゃん!無茶な事は絶対にしないでね!」 「…無茶な事しねーと勝てねえんだよ。」 相変わらず、レイアに対してもぶっきらぼうに返事するライクであるがその返事に泣きそうになりながら。 「だって、ライクお兄ちゃん1人で突撃して行きそうで怖いんだもん!」 「わ、悪かった!ちゃんと気を付けるって!」 泣きそ
そして現在、俺はこの国の危機を守らなければならない!そのために俺が…俺が…!! 「うわぁぁぁぁぁあ!!!!」 カイルが思いっきり剣を振ると黒い根っこは根元から一気に切り落とされ、切られた部分が霧散していった。 多少時間を稼げるが再生を続けるこの黒い根っこは10秒もあれば元どおりの状態に戻れた。 「このままじゃ…このままじゃ…」 諦めるな!カイル! エミルの声が頭の中で蘇った。 「そうだな、よし!俺も本気出さないとな。」 するとカイルの剣が黒く変色し、瞳が黒から赤く変わった。 「一発で止めてやる!」 カイルは縦に思いっきり振ると根元まで一直線に切れていった
グレンの魔力が溜まるまであと2分をきったがカイルにしてみたらこの時間は非常に長く感じた。 腕の筋肉が痙攣しすぎて既に感覚が無くなっていた。 「あともう少しだけ持ち堪えろ、騎士団の団長。あと少しでこの悪夢を終わらせてやるよ。」 「たの…むっ!」 しかし、黒い根っこは時間が経つに連れて再生するスピードを上げてくる為どんどん追い込まれていくのだった。 だめだ…追いつかない! そう思った時、カイルの頭の中で声が聞こえた。 「あんたって、すぐ諦めるよね。なっさけないなー!」 その声は綺麗な声であるが口が悪く少し男勝りな感じがした。 そして頭の中でその声の主を連想させた
「うわぁぁ!もう2人ともなんでこんなに強いのよぉ!」 この2人の衝突に巻き込まれたくないミーナは建物の陰に避難した。 2人は剣を交じり合わせながらお互いを褒めた。 「俺の双剣を直で受け止めた人はもしかしたら君が初めてかもしれないね。」 「お前も、俺の剣を受け止めるとは中々だな。」 「それは光栄だね。じゃあこれはどうかな?」 カイルは一旦グレンから離れると横一直線に2つの剣を振った。 するとグレンのそばにあった建物が斬れて上からぐずれ落ちてきた。 その建物の残骸を刀で真っ二つにし、再びカイルに近づこうとした。 「俺がこんなヤワな攻撃でダメージを与えれるわけない
血だらけの悪魔に対してカイルは1つも攻撃を喰らっていないため、無傷だった。 そして、悪魔はあることを思い出した。 「お…思い出したぞ!お前は、イフリークの守護神だな?」 「……」 カイルは返事を返すことなく、コクっと頷いた。 「まさか、神級魔導師が相手とは。だが、このPDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)の俺が負けるなどありえない!」 そしてPDOは地面に手を置くと周りに地割れが起こった。 カイルとミーナはあまりの揺れに体制を崩しそうになった。 「お前の魔法は影だ!その影を無くしてやればお前は何もでき…」 すると悪魔の背後から別の影が発生した。 そ